経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は国の機関である独立行政法人・中小機構が運営する制度である。掛金は毎月5000円から20万円までの範囲で選べ、総額800万円まで掛けれる。掛金は全額経費にできる。したがって、税金や社会保険料の減額ができる。
経営セーフティ共済の優れた点としては節税や社会保険料の減額の他に、掛金の借り入れ、任意解約までの積立期間が比較的短いなどがあげられる。
デメリットとしては掛金の受取時には税金がかかる点や任意解約では一定の期間掛金を積み立てないと100%の金額が戻って来ない点、申込みできる人が限定される点がある。
デメリットについては事前に把握しておくだけで、ある程度の対策は立てられる。こうしたデメリットを頭に入れた上で上手く利用するのが賢いだろう。
この記事では
▶ 経営セーフティ共済の優れた点
▶ 経営セーフティ共済で生じるデメリットとデメリットの解消方法
から
▶ 経営セーフティ共済への申し込み方法と経費計上の方法
まで詳しく述べていきたいと思う。
経営セーフティ共済の優れた点
収入が予想よりも多く余裕が生まれた場合、多くの人は貯金だったり、投資へとお金を回すだろう。事業を行っている人はこうした貯金や投資の他に、「経営セーフティ共済」への加入を検討すべきだ。
経営セーフティ共済へ加入すべき理由としては
1.事業を行っている人ならフリーター、会社員でも原則加入できる
2.掛金は全額経費にできるので税金、社会保険料を減らせる
3.40ヶ月以上支払えば任意解約でも全額戻る。お金が必要な時に掛金の95%まで0.9%の金利で借りれる
点がある。
下記でそれぞれ詳しく紹介していく。
事業を行っている人ならフリーター、会社員でも原則加入できる
経営セーフティ共済へは事業所得のある人、つまり、自分で事業を行っている個人事業主なら誰でも加入できる。会社員やフリーターなど給与所得が主な収入の人は仕事と副業の事業が異なっており、事業所得があれば加入できる。給与所得者の加入可否の点では経営セーフティ共済と似た性質を持つ「小規模企業共済」よりも基準が緩いと言えるだろう。
ただし、個人事業主にしても給与所得者の副業にしても、加入できるのは開業届を出してから1年以上であり、加入の際には審査もある。
経営セーフティ共済および小規模企業共済の加入条件について更に詳しく知りたい人は下記記事を参考に。

掛金は全額経費にできるので税金、社会保険料を減らせる
経営セーフティ共済は全額経費へと計上できる。利益(収入)が減ることにより、払うべき税金(所得税、住民税、事業税)や社会保険料が減る。
小規模企業共済は全額所得控除にできるため税金は減らせる。しかし、社会保険料は変わらない。したがって、小規模企業共済よりも経営セーフティ共済への加入を優先すべきだ。
40ヶ月以上支払えば任意解約でも全額戻る。お金が必要な時に掛金の95%まで0.9%の金利で借りれる
経営セーフティ共済は12ヶ月(1年)以上納付を続ければ、解約手当金を受け取れる。解約にはいつでもできる「任意解約」、個人事業主の死亡や法人の解散、分割による「みなし解約」、12ヶ月以上の掛金滞納や不正行為があった場合に中小機構が行う「機構解約」がある。
解約の理由によって、解約手当金(戻るお金)のパーセンテージが変わる。
掛金納付月数 | 任意解約 | みなし解約 | 機構解約 |
---|---|---|---|
1ヶ月から11ヶ月 | 0% | 0% | 0% |
12ヶ月から23ヶ月 | 80% | 85% | 75% |
24ヶ月から29ヶ月 | 85% | 90% | 80% |
30ヶ月から35ヶ月 | 90% | 95% | 85% |
36ヶ月から39ヶ月 | 95% | 100% | 90% |
40ヶ月以上 | 100% | 100% | 95% |
原則として、経営セーフティ共済は40ヶ月(3年4ヶ月)間積み立てると、任意解約でも100%戻ってくる。掛金滞納により機構解約されると任意解約よりも解約手当金が少なくなる。したがって、滞納が続きそうなら早めに自主的な解約も検討すべきだ。
また、経営セーフティ共済は掛金が30万円まで貯まると、解約手当金の95%を上限に借り入れができる。しかも、年利0.9%と低金利であり、払込んだ掛金が担保になっているため、審査なども不要である。
金欠の際に使えるお金として、収入に余裕があり、経費への使いみちがない時に800万円までプールできる。税金や社会保障費を減らせるため、現金で持っておくよりも賢い貯め方と言えるだろう。
経営セーフティ共済で生じるデメリットとデメリットの解消方法
経営セーフティ共済で生じるデメリットとしては
1.掛金の受取時は収入になる
2.40ヶ月以上支払わないと掛金が減る可能性
3.加入者は事業者のみ、収入が給与所得のみの人は加入できない
以上の点がある。
これらデメリットの解消方法について下記で詳しく紹介していく。
掛金の受取時には収入になる
40ヶ月以上支払えば、任意解約でも掛金は解約手当金として全額戻ってくる。しかし、解約手当金はその年の収入として税金が課税されてしまう。したがって、収入が多い年に解約手当金を受け取れば、節税どころか払うべき税金が増えてしまう可能性もある。
こうした税金を増やさないためには、
1-1.解約手当金を受け取る年はリタイア後など収入が低い年にする
1-2.新規事業を始めるなど、年の収入が大きく赤字になりそうな年に受け取る
といった手段がある。特に、後者の赤字の年に受け取れば、税金を一切払わなくても済むかもしれない。
ちなみに、社会保険料は上限額が低いため、毎月の掛金や年収にもよるが、収入が多い年に解約手当金を受け取っても、総額での支払は減らせる。目安として年収が900万円以内なら社会保険料は減らせる可能性が高い。
40ヶ月以上支払わないと掛金が減る可能性
経営セーフティ共済は40ヶ月以上支払を続けなければ、任意解約で戻ってくる金額が掛金の100%以下になってしまう。12ヶ月から23ヶ月では80%である。掛金で戻ってくる金額が減ると、収入が大きい事業者でない限り、加入で損をしてしまうケースも出てきてしまうだろう。
給与所得とは違い、事業所得は波が大きい。長期で継続できるか予測できない場合もある。したがって、ある程度事業が継続し、長期での売上が見込めるまでは最低額(5000円)での支払を事業開始当初の早いうちに進めた方が良いだろう。
毎月5000円程度、40ヶ月では20万円程度になるため、そこまで大きな負担にはならないはずだ。
加入者は事業者のみ、収入が給与所得のみの人は加入できない
経営セーフティ共済にはすべての人が加入できるわけではない。給与所得だけの会社員やフリーターは加入できない。
給与所得だけの人が加入したいなら事業を始めて、事業所得を作るしかない。給与所得者も事業をすると様々なメリットを享受できる。趣味など、現在、時間や金銭的なコストをかけてるものの事業化も考えてみよう。

経営セーフティ共済への申し込み方法と経費計上の際の注意点
経営セーフティ共済への加入は委託団体と金融機関の本支店でできる。
委託団体
・商工会
・商工会議所
・中小企業団体中央会
・中小企業の組合
・損害保険ジャパン日本興亜株式会社金融機関の本支店
・都市銀行
・信託銀行
・地方銀行
・第二地方銀行
・信用金庫
・信用組合
・商工組合中央金庫
委託団体が近場になくても金融機関の本支店で申し込みができる。近場の委託団体か金融機関の本支店へ連絡し、加入に必要な書類などは予め用意した上で訪問しよう。
著者は銀行口座を開設していた大手都市銀行の支店で手続きを行った。大手都市銀行もこれ自体大した収入にはならないだろう。しかし、丁寧に経営セーフティ共済の手続きを進めてもらった。
掛金は月額5000円から20万円までの範囲内、5000円単位で決められる。こちらも申込時に決める。
掛金は法人の場合は損金、個人の場合は必要経費に算入する。1年以内の前納掛金も、払い込んだ期の損金または必要経費に算出できる。前納の期間が1年を超えるものは、各事業年度末において、期間の経過に応じて、必要経費または損金の額に算入出来る。
払い込んだ掛金を必要経費または損金の額に算入する場合には、下記のような所定の明細書を添付することになる。
自分で確定申告を行う人は上記書類の用意も忘れずにしておこう。
経営セーフティ共済は余裕がある時に、将来に向けた金銭的な余裕を作る制度として事業所得のある人すべてにおすすめできる制度だ。まだ加入していない事業者は少額の積み立てから始めてみると良いだろう。
経営セーフティ共済を含めた個人向けの税金対策についてまとめて知りたい人は下記記事を参考に。
